港区の不動産買取業者が教える 瑕疵担保責任と契約不適合責任のちがい
2022/06/23
瑕疵担保責任と契約不適合責任のちがい
瑕疵担保責任と契約不適合責任のちがいについて説明します。
・買主に認められる権利内容がちがう
瑕疵担保責任の場合、瑕疵が認められても、買主ができることは「解除」と「損害賠償請求」だけでした。一方、契約不適合責任では「追完請求」や「代金減額請求」もできるようになり、権利の幅が広げられたと言えます。
・契約解除の内容がちがう
瑕疵担保責任の場合、解除は「目的を達成できない場合」に限定されていましたが、瑕疵担保責任で解除ができないのは「不適合が軽微な場合」のみとなっています。
・不適合発生の期間がちがう
瑕疵担保責任の場合、「契約時に存在した瑕疵」にしか適用されませんでした。しかし、現実には契約をした後から引き渡しまでの間に傷や欠陥が生じる場合もあります。そこで、契約不適合責任は「引き渡し時までに発生したトラブル」に対して適用されることになりました。
・損害賠償の範囲がちがう
瑕疵担保責任の場合、損害賠償の範囲は「信頼利益」に限られていましたが、契約不適合責任は信頼利益だけではなく履行利益まで「損害」に含まれるようになりました。
履行利益とは、履行がされていれば得られるはずであった利益のことを指します。例えば、宝石を転売目的で購入したところ、売主のミスで壊れ転売できなかった場合、転売利益が履行利益となります。
信頼利益とは、契約が有効であると信じたために発生する損害を指します。例えば、宝石を購入する際に、その購入代金として借入れをしていた場合、その借入利息は信頼利益となります。
・損害賠償請求できる要件がちがう
瑕疵担保責任は無過失責任だったため、売主に故意や過失がなくても買主は売主へ損害賠償請求ができました。一方、契約不適合責任の場合、売主に故意や過失がないと買主は損害賠償請求ができません。
・権利行使できる期間がちがう
瑕疵担保責任は、引き渡し後1年間という期間制限がありました。つまり、その期間内に請求や解除をするなど権利を実現する必要があったのです。一方、契約不適合責任では、引き渡し後1年以内に「通知」さえすれば実際に権利を実現するのはその後でも良いということになりました。買主が権利行使できる期間が長くなったと言えるでしょう。
契約不適合責任は任意で規定を設けられる
瑕疵担保責任も契約不適合責任も、その規定は「任意規定」となります。詳しく解説します。
・任意規定とは
任意規定とは、契約当事者同士が合意すれば、その特約は有効になるという規定のことです。例えば、売主と買主が合意すれば瑕疵担保責任を一部または全部免責することができます。築年数が古い建物を売却する場合には、「責任を一切負わない全部免責をする」というケースがあります。このように売主と買主の合意により、一部免責や全部免責をする特約をつけることが有効です。他にも、「追完請求は修補請求のみ」や「損害賠償の限度は〇〇万円」などと定めることが可能です。
・売主が宅地建物取引業者の場合は免除できない
売主が宅地建物取引業者の場合、契約不適合責任を勝手に免除することはできません。引き渡し後、最低2年間はすべての契約不適合責任を負うことになります。
宅建業法40条により、「宅建業者の契約不適合責任は2年より短くできない」「契約不適合責任を買主に不利に変更できない」と定められている通りです。
たとえば「瑕疵担保責任は1年間」や「修補請求不可」などと契約書に記載されていたとしても、特約は無効です。
ただし宅建業者同士の取引の場合は、この制限が適用されません。契約不適合責任の免除も可能です。